
北海道・日高、馬産地に咲き誇る「優駿桜ロード」。1,000本のエゾヤマザクラが織りなす桜のトンネルは、まさに絶景。春の訪れとともに、優駿たちの息吹と歴史を感じる旅へ誘います。
変わる季節と、変わらぬ風景に
桜並木の先にあるもの


「優駿さくらロード」。
その名前だけで、どこか春の香りを想像してしまう。けれど、訪れたのは夏の朝。空はどんよりとした雲に覆われていて、桜の花はもちろん、花びらの一枚すらない。ただその木々が、まっすぐに、そして静かに並んでいた。
この場所に花が咲く季節を知る人は、今ここを通ってもきっと想像できるだろう。春になれば、まるで夢の中の風景のように、馬と桜が共演する光景が現れるのだと。
朝露に濡れた草を踏みしめながら、その並木を抜けていく。
日本中央競馬会 日高育成牧場


並木を過ぎた先に、どっしりと立つ石碑があった。
「日本中央競馬会 日高育成牧場」と刻まれている。
ここは、サラブレッドたちが生まれ、育ち、巣立っていく場所。名馬と呼ばれる存在の、多くがこの地に足跡を残しているという。
競馬ファンにとっては、単なる観光地ではない。夢の始まりであり、物語の原点でもある。
広大な牧場には、整えられた厩舎やコースが点在していた。目に映る全てが「育てる」という意志を持って静かに佇んでいるように見える。
展望台から見下ろす「日高の風景」


少し坂を登った先の展望台から、牧場全体を見渡すことができた。
遠くの山々は雲に包まれ、目の前には広がる緑、整列する屋根、そして円形のトレーニング施設。
音は少なく、風の音と、ときおり草を揺らす鳥の羽ばたきだけが響く。
ここで働く人々、ここで育つ馬たち、それらを取り囲む自然――すべてが静かに、しかし確かに動いているのを感じた。








項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 日本中央競馬会 日高育成牧場 |
所在地 | 北海道浦河郡浦河町西舎 |
運営 | 日本中央競馬会(JRA) |
敷地面積 | 約1,500ヘクタール |
目的 | 競走馬(主にサラブレッド)の生産・育成・調教・研究 |
主な施設 | 屋内外トレーニングコース、放牧地、芝コース、坂路コースほか |
主な事業 | JRA育成馬の育成、飼養管理、疾病予防、調教技術研究・普及 |
見学 | 事前申込制で場内見学ツアーあり(不定期開催) |
アクセス | 国道235号沿い、JR日高線 幌別駅より車で約10分 |
公式サイト | https://www.jra.go.jp/facilities/farm/hidaka/ |
走らぬ馬、咲かぬ桜、それでもそこに在るもの
旅というのは、ときに「花が咲いていない」ことに意味がある。
満開の桜を見たわけでもない。馬たちの訓練風景に出会ったわけでもない。けれど、今ここにあるものの気配――それを感じた朝だった。
咲いていない桜が、咲く日を知っているように。
走っていない馬たちが、走る力をためているように。
静かな風景に、静かな気づきをもらった。
森のフクロウ川柳



咲かぬ花
走らぬ馬も 胸あつく
そんな話もありますねん。
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