【ベトナム#2-2】ホイアン灼熱紀行 〜提灯と汗と迷子の一日〜

ホイアン旧市街の夜、黄色い壁の建物にブーゲンビリアが絡み、色とりどりのランタンが灯っている様子
目次

朝、海がビルの谷間から覗いている

2025年8月13日4時半、ダナンのホテルで目が覚めた。なぜ旅先で早起きになるのか。見知らぬ土地の空気は目覚まし時計より確実だ。

ホテルの部屋でひと仕事片付けて、6時半からブッフェ。海がビルの谷間からちらりと見える席を確保した。

いい朝ごはん、というのはシンプルなもので、温かいコーヒーと野菜と地元の食材と、遠くに見える海があればそれで十分なのだ。

ベトナム・ダナンのホテルで食べた朝食プレート。オムレツ、チャーハン、ベーコン、生春巻き、スープなどが並んでいる。
地元らしい生春巻きやスープに、
オムレツやベーコンも添えてエネルギー補給。

7時半、歩いてバスの待ち合わせ場所へ向かう。ロムコーヒー前。海外での待ち合わせというのは、毎回「ホンマにここで合ってるのか」という不安がつきまとう。

地図上のピンと現実の景色が一致しない瞬間の心細さといったら。だが8時、無事に乗合バスに乗り込み、ホイアンへ出発した。

ダナン市内のロムコーヒー前。茶色い看板と水牛のオブジェがあり、バスの待ち合わせ場所として使われている。
ダナン・ロムコーヒー前でバスを待つ。
海外の待ち合わせは「本当にここで合ってるのか」と
不安になるのも旅の一部。

世界遺産の街で、まずアイスコーヒー

8時40分、ホイアン到着。

ベトナム中部の港町、かつて国際貿易で栄えた街。日本や中国、様々な国の文化が混ざり合って、どこか懐かしくて、でも確実に異国。

ホイアンの川辺に並ぶカラフルな遊覧船。青空と水辺が広がり、港町として栄えた面影を残している。
かつて国際貿易で栄えた港町ホイアン。
川辺に並ぶ色鮮やかな船が、その歴史と今をつないでいる。

1999年にユネスコ世界文化遺産に登録されたこの街は、特に夜のランタンが有名だ。

だから今日は昼からミーソン遺跡へ行くが、帰りにはダナンに直帰せず、夜のホイアンも楽しむつもりだ。

街を巡るチケットを購入して散策開始。9時25分、92ステーションでアイスコーヒー。観光の前にまず一杯、これは旅の鉄則である。

ホイアン旧市街のカフェ「92ステーション」で頼んだアイスコーヒーとライムジュース。木のテーブルに並び、背景にはランタンが吊るされた街並みがぼんやり映っている。
92ステーションでアイスコーヒー。

17世紀の家で食べる、白いバラ

9時50分、クアン・タン古家へ。

17世紀末に中国系商人が建てたこの家は、ホイアンで最も美しい家のひとつとされている。

上梁、直立柱、隠し柱、繋ぎ梁、補助アーチ梁——こういった建築要素が、広々とした空間を生み出し、同時に芸術作品のような佇まいを作り上げている。

ホイアンのクアン・タン古家。黒塗りの壁に精緻な彫刻が施され、梁と柱が織りなす美しい構造が見える。
17世紀の商家の建築様式が、
今も芸術品のように残されている。

壁や梁には盆景や掛け軸が飾られ、所蔵された骨董品や生活様式が、かつてのホイアンの繁栄を静かに物語っている。

ここでホワイトローズカオラウヌードルをいただいた。

ホワイトローズは、名前の通り白いバラの花のような蒸し餃子。

ホイアン名物のホワイトローズ。透き通る米粉の皮にエビを包み、揚げ玉ねぎを散らした蒸し餃子。
見た目は観光向けでも、地元で長く愛されてきた伝統の味。

米粉の皮にエビや豚肉の餡を包み、揚げ玉ねぎをのせて甘酸っぱいタレで食べる。見た目は観光客向けっぽいが、実際は地元で昔から愛されてきた軽食らしい。

カオラウは汁なし麺で、もちもちした独特の食感。古い家で食べる古い料理。時間が重なり合う感覚が、なんとも心地よかった。

ホイアン名物カオラウ。汁なしの太麺に揚げせんべい、香草、ライムが添えられた一皿。
ホイアン伝統の汁なし麺カオラウ。
古い家で味わうことで、時間が折り重なるよう
な不思議な心地よさを感じる。

日本橋と、ポーズを決める人々

ホイアンは写真映えする街だ。至るところで人々がモデルのようにポーズをつけて撮影している。まあ、気持ちはわかる。

ホイアン旧市街の土産物店。色鮮やかな布製ランタンが店先に吊るされ、街を華やかに彩っている。
ホイアンの街角に並ぶ色とりどりのランタン。

日本橋を撮影。詳しくは「橋物語」にアップ。こういう歴史的な橋を見ると、昔の日本人がここにいたのだという事実が、急に立体的に迫ってくる。

ホイアンの日本橋(来遠橋)。瓦屋根と木造の欄干を持つ歴史的な橋が、青空の下に堂々と残っている。
ホイアン旧市街に残る日本橋。
17世紀に日本人町と中国人町を結んだとされ、
今も往時の面影を伝えている。

日本橋の詳細はこちらの橋物語をご覧ください▼

橋物語|橋と歴史を巡る旅
ホイアンの日本橋(遠来橋)―時を超える“Chùa Cầu”の物語【ベトナム】 | 橋物語|橋と歴史を巡る旅 汗だくで巡るホイアン、そして日本橋との出会い 2025年夏、ベトナム・ホイアンの旧市街を、汗だくになりながら巡り歩いていた。 まぶしい快晴の青空の下、ふと目に入ったの...

灼熱の中、2kmを2回間違える

11時15分、奥さんがマッサージを受けている間、30分ほど街を見て回る。

そしてマッサージ後、次の目的地・ミーソン遺跡のツアーバスの待ち合わせ場所へ向かうのだが——ここで事件が起きた。

2kmほど逆方向に歩いた。

疲労と暑さで汗だくになった我々は、一触即発の雰囲気に(笑)。Googleマップで探すが、指定のレストランが表示されない。

近所の目印として書かれていた「ラフェスタホテル」を目指すことにした。

灼熱の中、また2km歩く。スマホは熱を持ってフリーズ寸前、画面はダークモードになり、この太陽光では満足に認識できない。

なんとかそれらしき場所に着いた。が、ブラウンアイズレストランがない。地元の人に聞いても「そんなレストラン知らない」と言う。

ホイアンの街角にあるランドリーとレンタルバイク店。ツアー集合場所を探して歩き回った末にたどり着いた一角。
灼熱の中を歩き続け、やっとたどり着いた。
集合場所近くの風景。

絶望しかけたその時、ラフェスタホテルの前で待っていた白人家族連れのお父さんに「遺跡のツアーに行くのか?」と聞いたら、「そうだ」と。

おお、よかった。

一安心。13時、無事にツアーバスに乗り込んだ。

ミーソン遺跡、炎天下の聖域

ミーソン遺跡の入口ゲート。赤いアーチに“MY SON - THE WORLD CULTURAL HERITAGE”と記された看板が掲げられ、多くの観光客が中へ向かって歩いている
ミーソン遺跡の入口ゲート。

13時14分、ドゥボン川を渡る。14時、ミーソン遺跡到着。入場料1人150,000ドン(900円)。トラムに乗って移動する。

暑い。

ベトナム中部にあるミーソン遺跡は、4世紀から13世紀にかけてチャンパ王国が築いたヒンドゥー教の聖域。1999年、世界文化遺産に登録された。

接着剤を使わずに焼成レンガを積み重ねた独特な建築技術。カンボジアのアンコール遺跡を思わせる塔やレリーフ。シヴァ神を祀る、かつての聖地。

そして、ベトナム戦争中に激しい爆撃を受けた跡が、今も生々しく残っている。破壊されたままの遺構が、戦争の悲惨さを静かに伝えている。

深い山々に囲まれた盆地に、自然と一体となった神秘的な遺跡群。約2時間、炎天下の中、ガイドさんの英語の説明を受ける。日陰がなく、逃げ場がない(笑)。

炎天下のミーソン遺跡。観光客が日傘や帽子で強い日差しを避けながら見学している
直射日光にさらされるミーソン遺跡。

16時、トラムでバスへ戻り、移動。途中、Cầu Chìm橋やCâu Lâu Bridgeを撮影。

ミーソン遺跡の詳細はこちら▼

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川は濁り、海は澄む理由

17時20分から、バインミーを食べながらトゥボン川のサンセットクルーズ。Cẩm Kim Bridgeを撮影しながら、ふと思った。

トゥボン川で夕暮れのクルーズを楽しむ人々。小舟にランタンが飾られ、川面が夕陽にきらめいている
ランタンの灯りとともに流れるトゥボン川の時間

ダナンの海はあんなに美しかったのに、ホイアンの川はなぜこんなに濁っているのか。

答えは地理にあるらしい。

ダナンの海は、広大な海岸線に面していて、太平洋の波が絶えず流れ込むことで海水が循環し浄化されている。

白い砂浜も透明度を高めている。観光都市として排水管理にも力を入れているそうだ。

一方、ホイアンのトゥーボン川は、上流の山岳地帯から赤土(ラテライト)などの土砂を大量に含んで運んでくる。この土壌の色が水に溶け込んで、赤黒く濁って見えるのだ。

しかもデルタ地帯で流れが穏やかなため、海のように絶えず入れ替わるわけではない。川底に土砂がたまりやすく、濁りがとれにくい。

つまり、海は常に入れ替わり、川は常に運ばれてくる。そういうことらしい。

Miss Lyでディナー、そして提灯の夜

ホイアンの街でディナー。17時55分、Miss Lyに入店。18時45分に店を出る。520,000ドン。

そして、いよいよ夜のホイアンだ。

ホイアンの夜市を歩く観光客と、軒先に並ぶ色とりどりのランタン
観光客で賑わうホイアンの夜市。
軒先にはランタンがぎっしりと並び、
幻想的な光に包まれる。

夜風に揺れる色とりどりのランタンが通りを幻想的に照らし、歩く人々の影を映し出している。

シルクや布で作られた提灯は、赤、黄、青といった鮮やかな色から、花柄や模様が描かれたものまで様々。

その明かりが道のあちこちに灯り、まるで光のトンネルを歩いているかのようだ。

ホイアン旧市街の二階建て建物に吊るされたカラフルなランタンと、ランタン作りやペインティングの看板
夜のホイアン旧市街。
ランタン作りやペインティングの
体験教室を案内する建物には、
色とりどりのランタンが灯っている。

屋台やお店には、たくさんの提灯が所狭しと吊るされ、その光は行き交う人々や商品に柔らかく降り注いでいる。

ホイアン旧市街の夜、黄色い壁の建物にブーゲンビリアが絡み、色とりどりのランタンが灯っている様子
ホイアンの旧市街を彩るランタンとブーゲンビリア。
夜の光と花が織りなす幻想的な景色。

観光客が立ち止まって提灯を眺め、写真を撮り、店の人と会話を交わす。

賑やかながらもどこか落ち着いた雰囲気。風通しの良い涼しい夜、ランタンの優しい光に包まれながら、古都の夜をゆっくりと散策する。

写真では伝わりにくいが、美しい

HighlandCoffeeで乗合バスを待つ。ここは大渋滞。タクシーと乗合バスが集結している。19時半、ようやくバスに乗車。20時半、ホテル到着。

ぐたぐたに疲れた身体をシャワーの水でリフレッシュ。21時には就寝。

しかし、路面では遅くまでライブをやっていて、やかましい。

けど、こういうのも悪くない(笑)

ほな、また明日!

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