【富内銀河ステーション】廃線跡に泊まれる、北海道むかわ町の鉄道遺産

北海道むかわ町の富内銀河ステーションに保存された青い客車。背後には緑豊かな山々が広がり、車両横の芝生には白い軽バンが停まっている。
目次

富内銀河ステーションで泊まる、8月の連休中日の夜

北海道むかわ町の富内銀河ステーション。夜の保存客車から温かな灯りが漏れ、静まり返った廃線ホームに浮かび上がる情景。
夜のホームに浮かぶ、灯りのともった保存客車。

2025年8月の連休中日、新冠温泉でノマドワークする予定を急きょ変更。

「電源あり・通信OK・宿泊可・風呂近く」──仕事ができる!条件が揃った富内銀河ステーションへ直行した。

到着すると、廃線のホームと保存車両が夕暮れに浮かび、時間が止まったような静けさに包まれていた。

富内銀河ステーションについて

北海道むかわ町の富内銀河ステーション。保存された青い客車と、隣に駐車する白い軽バン。背景には緑の芝生と山並みが広がる。
青い客車と旅の相棒。

富内銀河ステーションは、北海道むかわ町穂別富内に位置する旧国鉄富内駅の跡地で、廃線後も駅舎・ホーム・線路が完全保存された国内でも珍しい歴史的施設である。

北海道むかわ町の富内銀河ステーションに保存された青い客車の内部。窓が並ぶ車内には畳とカーペットが敷かれ、布団や座卓が置かれた宿泊用スペースとして活用されている。
毛布と布団が整えられた、客車宿泊スペース。

歴史的背景として、この駅は1923年(大正12年)11月11日に北海道鉱業鉄道金山線の駅として「辺富内駅(へとないえき)」の名前で開業した。

当初の駅名はアイヌ語の「ケッオナイ(ket-o-nay)」(毛皮の張り枠・がある・川という意味)に由来しており、後に「辺」を除いて「富内」と改称された。

1943年(昭和18年)に戦時買収により国有化され、1986年(昭和61年)11月1日に富内線廃線とともに63年間の歴史に幕を閉じた。

運営時代の役割は非常に重要で、周辺地域から産出されるクロム鉱石、木材、薪炭などの輸送ターミナルとして機能していた。

昭和20年代の駅構造は単式ホーム1面4線を有し、蒸気機関車のための石炭庫、給水塔、機関庫が整備され、C11形蒸気機関車が12-13両にも及ぶ貨車と客車を牽引する一大拠点駅であった。

北のイーハトーブを目指す

廃線後の展開で特筆すべきは、1986年の富内線廃線後に地域住民が「銀河鉄道の里づくり委員会」を組織し、宮沢賢治の理想郷「イーハトーブ」を目指した地域づくりを始めたことである。

北海道むかわ町の富内銀河ステーション入口に立つ木製の看板「IHATOV 北のイーハトーブ」と、背景に並ぶ保存客車。廃線跡の広場に青い車両が静かに佇む。
「北のイーハトーブ」看板と保存客車。

戦後まもない頃から穂別村の村長が宮沢賢治の世界観による村づくりを構想しており、この精神を受け継いで「ほべつ銀河鉄道運動」が展開された。

銀河ステーションの由来

「銀河ステーション」の名前の由来は、宇宙飛行士の毛利衛さんのアイデアにより、駅の側線を空に向けて改造し、宇宙へと続くレールを表現したことにある。

北海道むかわ町の富内銀河ステーション構内に残る木製跨線橋跡。線路の上に階段が架かり、廃線当時の鉄道風景を今に伝えている。
線路をまたぐ木製の跨線橋跡。

この天空に向かうレールのモニュメントが「銀河鉄道999」を彷彿とさせることから、松本零士さんとの縁も生まれた。

文化財としての価値も高く、2001年(平成13年)9月14日に国の登録有形文化財に指定され、駅舎、プラットホーム、線路など駅全体が保護されている。

北海道むかわ町の旧富内駅駅舎。赤い屋根と水色の外壁が特徴的で、正面には「富内駅」の駅名看板が掲げられている。
赤い屋根が印象的な旧富内駅駅舎。

映画「鉄道員(ぽっぽや)」の備品

映画「鉄道員(ぽっぽや)」の撮影では、当駅から備品が貸し出されるほど当時の状態が良好に保たれている。

また、ホームには国鉄旧型客車のスハ45形とオハフ33形の2両が静態保存され、富内線の写真パネル展示場として活用されている。

北海道むかわ町の旧富内駅の駅舎内展示。赤いポストやストーブ、駅名標、信号てこなど、廃線当時の鉄道備品や写真が並ぶ。
旧富内駅に残る鉄道備品と懐かしい展示品。

ロケ地で使われた幾寅駅(南富良野)のフォトギャラリーはこちらからどうぞ!

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宿舎としての活用

現在の活用としては、駅前のふじ屋商店で手続きをすれば客車内での宿泊も可能(500円)。

また、週4日間は近くの富内生きがいセンターで入浴(300円)もできる。

廃線から約40年が経過した現在でも、北海道の鉄道遺産として、また宮沢賢治の世界観を体現する観光地として多くの人々に愛され続けている。

北海道むかわ町の富内銀河ステーション利用時に料金を支払う「ふじ屋商店」。青いシャッターと白い外壁が特徴で、店先には自動販売機が置かれている。
富内銀河ステーションの料金支払いを行う、ふじ屋商店。

基本情報

項目詳細
正式名称富内銀河ステーション(旧国鉄富内駅)
所在地〒054-0364 北海道勇払郡むかわ町穂別富内81番地1
開業1923年(大正12年)11月11日(辺富内駅として)
廃駅1986年(昭和61年)11月1日
文化財指定2001年(平成13年)9月14日 国の登録有形文化財
営業時間屋外施設のため特になし
見学料金無料
宿泊料金500円(客車内)
駐車場あり
保存車両スハ45形・オハフ33形客車2両
保存設備駅舎・ホーム・線路・腕木式信号機
特徴的設備天空に向かう側線レール
アクセス札幌から車で約130分
問い合わせ0145-46-6212(元藤屋商店)
入浴施設富内生きがいセンター(300円・週4日営業)
最寄り施設聖観世音菩薩像(賢治観音)約170m

富内銀河ステーションFAQ

利用・見学について

Q: 富内銀河ステーションは予約なしで見学できますか?
A: 屋外施設のため基本的に予約は不要です。24時間自由に見学できますが、客車内宿泊を希望する場合は事前に元ふじや商店(0145-46-6212)への連絡が必要です。

Q: 見学料金はかかりますか?
A: 見学は無料です。ただし、客車内での宿泊を利用する場合は500円の料金がかかります。ふじ屋さんにお支払いください。

Q: 車でのアクセスは可能ですか?
A: はい、駐車場が完備されており、札幌から約130分でアクセス可能です。カーナビでは「むかわ町穂別富内81番地1」を設定してください。

宿泊について

Q: 客車での宿泊はどのように予約しますか?
A: 駅前のふじ屋商店で手続きを行います。事前に電話(0145-46-6212)で空き状況を確認してから訪問することをおすすめします。宿泊料金は500円です。

Q: 入浴施設はありますか?
A: 近くの富内生きがいセンターで入浴可能です(300円・週4日営業)。利用前に営業日を確認してください。

施設・歴史について

Q: どのような歴史がありますか?
A: 1923年に「辺富内駅」として開業し、1986年に富内線廃線と共に役目を終えました。現在は国の登録有形文化財(2001年指定)として保存されており、宮沢賢治の世界観を体現する「銀河ステーション」として親しまれています。

Q: 「銀河ステーション」の名前の由来は?
A: 宇宙飛行士の毛利衛さんのアイデアで駅の側線を空に向けて改造し、宇宙へと続くレールを表現したことから「銀河ステーション」と呼ばれるようになりました。

Q: どのような見どころがありますか?
A: 天空に向かう側線レール、国鉄時代の駅舎・ホーム・線路の完全保存、旧型客車の静態展示、富内線の写真パネル展示などがあります。映画「鉄道員(ぽっぽや)」の撮影にも協力した貴重な鉄道遺産です。

周辺情報

Q: 近くに他の観光スポットはありますか?
A: 駅から約170mの場所に聖観世音菩薩像(賢治観音)があります。むかわ町穂別地区には恐竜化石関連の施設なども点在しています。

Q: 食事はどこでできますか?
A: 駅周辺は過疎地域のため、食事は事前に準備するか、車で移動可能な範囲の飲食店を利用することをおすすめします。

Q: 冬期の見学は可能ですか?
A: 屋外施設のため冬期も見学可能ですが、北海道の厳しい冬の気候を考慮し、防寒対策を十分に行ってからお越しください。

お問い合わせ・注意事項

Q: 問い合わせ先は?
A: 元ふじや商店(0145-46-6212)までお問い合わせください。宿泊や施設利用に関する詳細な情報を提供いたします。

Q: 注意すべき点はありますか?
A: 歴史的価値のある文化財のため、施設を大切に扱ってください。

Q: 携帯電話・インターネットの電波状況はどうですか?

A: 富内橋周辺の大型電波塔の影響で、au系回線(povo含む)では良好な通信環境が期待できます(2025年8月実測値:下り43Mbps、上り14.2Mbps)。ただし、キャリアによって電波状況が異なる可能性があるため、車中泊やワーケーション予定の方は事前に各キャリアの電波エリアマップで確認することをおすすめします。

Q: 食事や買い物はどこでできますか?
A: 駅周辺は過疎地域のため、食事・買い物施設は限られています。車中泊をされる方は事前に食料や必要な物資を準備してからお越しください。最寄りのコンビニや飲食店までは車での移動が必要です。

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