忘れられない、あの朝の湯
朝の光が森の奥から差し込んできた。
道は舗装されておらず、車体が小刻みに揺れる。そして、心は静かに沸き立っていた。
「今度こそ、鹿の湯に辿り着ける。」
前回は通行止めで引き返した。ずっと“心残り”だった場所。
野営場を抜けて川沿いに歩くと、湯けむりが見えた。
そこはまるで、自然そのものが差し出す手のひらのような場所だった。
アブの大群に囲まれながらも、湯に浸かったあの瞬間──
僕の旅の記憶に、確かなひとしずくが落ちた。

鹿の湯温泉とは
北海道の大自然が色濃く残る然別峡。
その原生林と渓谷のただなか、ユウヤンベツ川のほとりにひっそりと湧く野天風呂が「鹿の湯温泉」です。帯広市内から車を走らせ約90分、林道を抜けて然別峡野営場に着くと、そこからさらに川沿いに進むことで、この“秘湯”が姿を現します。
鹿の湯温泉の醍醐味は、まさに自然と一体となる野性味溢れるロケーション。石で囲まれた素朴な湯船が川沿いに設えられ、森林と水音に包まれながら湯浴みできます。泉質は無色透明の単純泉(実際はナトリウム炭酸水素塩泉系とも言われる)、体感温度は43~45℃ほど。湧き出し口付近はかなり熱いため、熱ければ川水で体を冷やしながら交互浴を楽しむのがこの場所ならではのスタイルです。
利用と注意点
入浴料は不要、営業時間も特にありませんが、利用できるのは7月から9月のキャンプ場営業期間のみ。それ以外の季節や夜間の入浴は危険を伴うため避けましょう。男女混浴で、脱衣所やロッカー設備もない完全な“野湯”型。夏場は虫(特にアブ)が多いこと、滑りやすい岩場や落葉がある点などには十分注意してください。
湖や山、温泉を求めるアウトドアファンや秘湯好きにはまさに究極の癒し空間。然別湖や山田温泉跡など周辺も見どころが多く、北海道・道東のワイルドな温泉体験を楽しみたい方に最適のスポットです。
鹿の湯温泉(然別峡)基本情報まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | 北海道河東郡鹿追町然別峡 |
泉質 | 単純温泉(現地掲示なし、一部でナトリウム炭酸水素塩泉との説あり) |
温度 | 湧き出し口43~45℃前後 |
料金 | 無料(協力金募金箱あり) |
利用時間 | 7月~9月(野営場営業期間のみ推奨・24時間だが夜間や冬季は危険) |
設備 | 脱衣所・ロッカーなし、男女混浴 |
アクセス | 車で帯広市内から約90分、林道は冬季閉鎖あり、悪路注意 |
駐車場 | 野営場併設(未舗装・無料) |
特徴 | 川沿い・野趣溢れる無料の野湯、夏は虫が多い、自然物そのまま |
周辺 | 然別湖まで車で約10分、山田温泉跡・扇ヶ原展望台など |
注意点 | 滑りやすい岩場、虫、携帯圏外、冬季通行不可、マナー遵守必須 |
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