日本一寒い町・陸別で出会った南極への物語【北海道】

2025年7月22日2025年7月30日

陸別町に展示されている南極観測用雪上車SM252を斜め前から撮影。オレンジの車体に「252」の番号が入っている。

ノマドマ

日本一寒い町・陸別で、真夏に体感する南極の物語。かつて南極を走った雪上車「SM252」が語る、日本の南極観測隊の挑戦と誇り。偶然の出会いが心を温める、陸別ならではの深い旅の体験。
よければ、一緒に旅気分を味わってみてください。

2025年7月22日、陸別でノマドワークの朝で気温が30度！

2025年7月22日。日本一寒い町・陸別で、朝のノマドワークをするべく、道の駅オーロラタウン93りくべつへ向かった。

しかし、朝8時で気温はもう30度。
「日本一寒い町りくべつ」と電光掲示板が謳う中、流れたのは冷や汗ではなく、正真正銘の汗だった。

陸別町に設置された「日本一寒い町」の温度表示モニュメント。表示は30℃。 — 「日本一寒い町」と書かれた陸別のモニュメント。しかしこの日は30℃を記録し、看板とのギャップに驚かされる。

とはいえ、ここのフリーWi-Fiの速度は意外なほど速く、快適に仕事ができる。
しばしPCを広げて一仕事終えた後、道の駅で買い物をしてから次の目的地に向かおうと車へ戻った。

陸別町の施設内にあるカウンターデスク。ノートパソコンとタンブラーが置かれ、外には作業車両が見える。 — 陸別でのノマドワークスポット。窓の外に展示車両を眺めながら、快適に作業できるカウンターデスク。

そのとき、少し離れた駐車場の端に、なにやら古い車両の展示が目に留まった。
普段ならスルーしてエンジンをかけるところだったが、今日はなぜか心が惹かれた。

そして近づいてみると――。

南極への道を走った小さな雪上車

陸別町に展示されている南極観測用雪上車SM252と燃料ドラム缶。屋根付きの屋外展示。 — 陸別町で静かに佇む南極観測用雪上車SM252。10年にわたり南極で活躍した姿がここに。

正面から見た南極観測用雪上車SM252。無骨なデザインが印象的。 — 陸別町で静かに佇む南極観測用雪上車SM252。10年にわたり南極で活躍した姿がここに。

展示されていたのは、かつて南極で活躍した雪上車「SM25S」シリーズの一両、SM252だった。
傍らにはパネルが立っていて、読んでみるとその物語に引き込まれた。

南極専用小型雪上車「SM25S」に関する解説パネル。仕様や活動記録、写真が記載されている。 — SM25Sの歴史と性能を伝える解説パネル。読めば読むほど、この小さな車の大きな物語が見えてくる。

南極観測の昭和基地や沿岸地域での調査・観測では、海氷の上を走れる特殊な雪上車が必要だったという。
それまで使われていた車両は軽量化のために牽引力が弱く、オーバーヒートしやすく、冬の運用は難しかった。
その課題を克服するために開発されたのが、油圧駆動・オートマチック方式の「SM25S」シリーズだった。

南極の氷上で作業する赤い防寒服の隊員たちと、雪上車SM252。背景には氷壁が広がる。 — 南極の厳しい氷上で調査を行う隊員たちと雪上車SM252。果てしない白の大地に挑む姿がまぶしい。

陸別町に展示されている南極観測用雪上車SM252の後方からの姿。黄色い幌とキャタピラが特徴的。 — 後方から見たSM252。黄色い幌が南極の白い風景に映えたのだろう。

日本南極地域観測隊のロゴが貼られた燃料ドラム缶が整然と並ぶ橇の展示。 — 「日本南極地域観測隊」の文字が誇らしい燃料ドラム。橇に積まれ、過酷な南極の旅に挑んだ。

1987年に昭和基地に搬入され、10年もの間南極で活躍し続けたSM252。
総走行距離は7,214kmにも及び、過酷な環境の中で任務を全うした後、1998年に帰国し、ここ陸別に迎えられたという。

雪上車の足元に立って見上げると、その鉄の躯体は静かに、しかし確かな誇りを湛えているようだった。

日本の南極観測のルーツ

もう一枚のパネルには、さらに日本の南極観測の歴史が記されていた。
日本の南極観測のルーツは、1912年、白瀬矗（しらせのぶ）隊長率いる南極探検隊まで遡るという。
そして1957〜58年の国際地球観測年に伴うプロジェクトが始まり、1956年に第1次南極地域観測隊が派遣された。
以来60年以上もの間、幾多の困難を越えながらも観測は続いている。