赤松SA〜安富SA〜津山城跡(鶴山公園)〜道の駅久米の里〜天将(ホルモンうどん)〜長男宅〜南大門(満員)〜肉のサトウ商店〜ワンファイブホテル
岡山津山城とホルモンうどん、夜はひとり焼肉
2025年 岡山長男引っ越しの旅
初日:2025/03/26 約4時間30分 走行距離:約230km
ズボンが見つからない朝から、旅は始まる
7時、事務所で起床。 家に戻り風呂・洗濯。お気に入りの旅行用ズボンが見当たらない。 「気に入ってたのに……」と胸がチクリ。 まあ、また探そう、また買おう、旅は続く。
赤松コロッケ、SAの小さな幸せ
9時10分、再出発。名神・阪神・中国道を走り、11時過ぎに赤松SAへ。 赤松コロッケ(180円)をほおばると、なんだか妙に心に残る味。 旅の途中の一口って、どうしてこんなに特別なんやろう。

津山城跡、桜はまだでも心は咲く
13時過ぎ、津山市へ。満車の駐車場にしばし待機、ようやく鶴山公園へ。
津山城跡の石垣を見上げ、5年前の満開を思い出す。
津山城は、関ヶ原の戦いのあと、美作の地を治めることになった森忠政が築いた城。
1604年に着工し、完成までには13年という長い歳月がかかったという。
山のかたちを活かした堅牢な造りと、五重の天守をもつ堂々たる姿は、かつて「日本三大平山城」のひとつに数えられたそうや。
けれど、時代の流れには逆らえず、明治の廃城令で取り壊され、いま残るのは、苔むした石垣と、ふと風が抜けていくような静けさだけ。
それでも不思議と、この場所には、確かな気配が残っていた。
城跡を歩いていると、石垣の隙間から、しんしんと時の重みがしみ出してくるような気がしてくる。
400年を越える記憶が、声をひそめながらも、たしかにこの地に息づいているようやった。
いま、この場所は「鶴山公園(かくざんこうえん)」として、人々に親しまれている。
春になれば桜が咲き誇り、かつての天守があった丘には、家族連れや旅人たちの笑い声がふわりと舞う。
過ぎていった時代に思いを馳せながら、今の風景を味わう。そんな時間が、ここには流れていた。




【道の駅 久米の里】田んぼの中に、Zガンダムが立っていた。
14時45分、津山の町から南へ車を走らせてしばらく。
のどかな田園風景の中に、ぽつんと現れる「道の駅 久米の里」。
ふつうの道の駅やろうと油断していた。
ところが、駐車場に入った瞬間、思わず「うおっ」と声が出る。
そこには、等身大のZガンダムが──。
高さ7メートルを超えるその姿は、ただ“置いてある”んやない。
ちゃんと立っている。構えている。
まるで今にも、地球を守るために動き出しそうな存在感。
聞けば、なんと地元のガンダム好きの方が、個人で制作したらしい。
しかもその方、設計から組み立てまで自力でやり遂げたというんやから、もう脱帽や。
道の駅の中では、地元野菜や名物グルメも並んでいて、それはそれで魅力たっぷり。
でも──正直、あのZガンダムを前にすると、他のものが全部モブに見えてしまうほどの衝撃やった。
「なんで、こんなとこに……?」
でも、それがええ。旅はそういう「まさか」に出会えるから、おもしろい。
Zガンダムが見上げていた空の向こう。
自分のなかの少年心みたいなもんが、ちょっとだけ目を覚ましてた気がする。

津山ホルモンうどんに会いたくて
津山といえば、やっぱりホルモンうどん。
旅に出る前から、これは絶対に食べておきたいと思ってた。
けれど──
津山城跡を歩いていたら、思いのほか時間が経ってしまっていた。
石垣に刻まれた歴史の空気に飲まれたのか、気づけばもう15時をまわっていた。
慌てて、近くのホルモンうどんの店を2軒ほど電話してみたけど、どちらも「昼の営業は終了しました」とのこと。
もう今日は無理か……と、少しあきらめかけたとき、最後の頼みの綱「天将」に電話してみた。
「15時半ごろになるんですけど……間に合いますか?」
電話口から聞こえてきたのは、少しかすれた、でも明るくてやわらかい、おばあちゃんの声。
「やってますよ〜。はいはい、やってますよ〜」
その言葉に、思わず胸があったかくなった。
急いで向かい、15時半に天将に到着。
店内には他にお客さんはおらず、看板には「15時まで」とある。
……つまり、30分も、いや、料理と食事の時間を合わせたら1時間も延長してくれたということになる。
カウンター越しに、おばあちゃんが手際よくホルモンを炒め、うどんと絡めてくれる。
立ち上がる湯気、香ばしいにおい──そして何より、その味は、どこか懐かしくて、あたたかかった。
その後、天将でホルモンうどん。感じのいいおばあちゃんが作ってくれるあったかい味。
こういう地元めし、たまらん。

旅先で出会った、ほんの短い時間の優しさ。
あのホルモンうどんの味と一緒に、きっと忘れへんと思う。
ひとり焼肉、でも二人の心地よさ
夜、南大門は満員で断念。代わりに「肉のサトウ商店イコットニコット店」へ。

この店の特徴は、なんといっても“ひとり1台”の無煙ロースター。
ひとり焼肉はもちろん、ふたりでも、それぞれのペースで楽しめるのがいい。
私も、奥さんと並んで座りながら、それぞれのタイミングで肉を焼いては、無言でうなずき合う。
名物と書かれていた「釜炊きご飯」を頼んでみた。
炊きたてのつやつやごはんに、じゅわっと焼き上げた肉をのせて──
もう言葉なんていらん。
香ばしいおこげの部分を頬張ったとき、「ああ、これやな」と思わず声がもれた。
こんな贅沢、旅の夜にぴったりや。
ビールも進んで、20時をすぎたころ、店を出てホテルへ。
ほんのりと火照った顔と、満たされたお腹。足取りは自然とゆるやかになる。
旅って、こういうものやな。
偶然と、思い出と、食の連なり──そのひとつひとつが、静かに積もっていく。
ほな、また!