ナナがつないだ奇跡──忠類ナウマン象、54年ぶりの再会

忠類ナウマン象記念館に展示されたナウマン象の全身骨格模型
目次

はじめに──この展示、まさかの「今日限り」

2024年10月。忠類ナウマン象記念館で、まさかの「奇跡の再会」に立ち会った。

54年ぶりに再発見された忠類ナウマン象の頭骨片が、この日、特別展示として公開されていたのだ。しかも、展示はこの日限り。思わず「えっ、今日だけ!?」と声が漏れた。

54年ぶり!忠類ナウマン象化石の再発見
54年ぶり!忠類ナウマン象化石の再発見

JAF割引で200円。なのに歴史的瞬間に遭遇

午前10時40分、JAF割引で200円の入館料を払い、記念館に入る。するとすぐに、ひとりの学芸員さんがスッと近づいてきた。物静かだが、目の奥に灯る熱意がすごい。

彼は自らの発見のように、この化石について語ってくれた。

それは、54年ぶりに見つかった忠類ナウマン象の頭骨片。その特徴は「含気骨」と呼ばれる部位にあった。

新たに発見した忠類ナウマン象の頭骨片
新たに発見した忠類ナウマン象の頭骨片。この展示もこの日までとのことで、見れてラッキー!
  • 薄く張り巡らされた骨梁
  • 無数の空洞
  • 外板骨や内板骨と接する、キノコ状や瓢箪状の構造

これがまさに、現生のゾウと一致する構造であり、ナウマン象の化石であると証明されたという。

決定的な証拠をくれたのは「ナナ」

帯広動物園のアジアゾウ「ナナ」の頭骨標本(キバの骨含む)
おびひろ動物園のナナの頭骨。内部構造が観察できる貴重な資料で、忠類ナウマン象化石の同定の決め手となった。

そして、もっと驚いたのは、その化石の同定に「帯広動物園のナナ」が関わっていたという事実だった。

ナナは2020年3月に天国へ旅立ったメスのアジアゾウ。その頭骨の一部は、病理解剖ののち保存され、ゾウの健康管理のための貴重なデータとなった。

今回、忠類で発見された化石とナナの頭骨が比較され、類似の構造が確認されたことで、ナウマン象であることが決定的となったのだ。

ナナは1970年にも忠類を訪れていた

実はナナ、1970年にも「ナウマン象の墓参り」として忠類を訪れていた。

この年は、忠類ナウマン象の大規模な発掘が行われた年でもある。ナナがまだ仔象だった時代だ。まるで、時を超えてナウマン象との再会を果たすために忠類を訪れていたかのよう。

1970年は忠類ナウマン象の大発掘が行われた年です。実は、ナナがまだ仔象であったこの年に、「ナウマン象の墓参り」のため忠類(当時は忠類村)を訪れてくれました。 このように忠類に縁のあるナナ(の頭骨)が、今回発見した化石の同定の決め手となったことはとても感慨深いことであり、忠類の地域紙を語る上でナナは昔と今をつなぐ特別な存在となりました。
1970年に仔象の時に忠類を訪れたナナ

そして今、50年以上の時を経て、再びナナが化石の同定という形で“手助け”をしたのだと思うと、不思議な縁を感じずにはいられなかった。

「ナナが遺してくれたもの」──共に歩んだ56年

ナナの頭骨を真上から見ると、大きな鼻の穴(骨鼻口)があり、その奥にはキバが生える骨の基部が見える。この骨が、今回の発見の照合に役立ったという。

忠類ナウマン象と、帯広のナナ。
このふたつが静かに結ばれる物語に、私は心を打たれた。

「忠類って、ええとこやん…」
そう、素直に思えた瞬間だった。

忠類ナウマン象記念館 基本情報

項目内容
名称忠類ナウマン象記念館
所在地〒089-1701 北海道中川郡幕別町忠類白銀町383-1
電話番号01558-8-2826
開館時間9:00~17:00
休館日火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日または30日~1月3日または5日)
入館料一般(大人)300円、高校生150円、小中学生200円、団体割引あり
駐車場約100台(無料)/記念館近くに身障者含む6台分あり/道の駅忠類共用
アクセス帯広駅より十勝バス更別経由大樹・広尾行き「ナウマン象記念館前」下車すぐ/車:帯広広尾道忠類ICから約1分
備考道の駅忠類に隣接、館内はナウマン象型デザイン、バリアフリー設備あり

※公式ウェブサイトや電話等で最新情報をご確認ください。

森のフクロウ川柳

森のフクロウ

再会は
 象の時間の 呼びかけで

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