新千歳空港〜むかわ町〜山の駅ほろしり〜道の駅 樹海ロード日高〜日勝峠〜帯広・居酒屋わ〜るど
初日アーティックジャーニーの始まり
2025年北海道春の北海道車中泊の旅(Part12)
初日:2025/05/24 運転時間:約3時間45分 走行距離:約225km
小雨の西宮から、ひとり空へ
朝10時半、いつものように小雨の西宮を出発。気温も空気も少し肌寒く、ぼんやりした空模様が、逆に旅の背中を押してくれる。
梅田まで1時間。関空行きのバス乗り場は人で溢れてた。なんや、今の時代の旅ってこんなに人多いんか。
13時10分に関空第2ターミナル着。予定よりずっとスムーズで、少し時間もできたんで、ブログ用の画像を整理したりしてるうちに離陸の時間。14時15分にテイクオフ。
新千歳、冷たい風と見知らぬ迎え

16時3分、新千歳空港に着陸。外に出たら13度。肌寒い。
いつもながら「来たな」というより「戻ってきたな」と感じる場所だな。
駐車場には、空港から送迎車で向かう。
送迎車の利用者が自分ひとりかと思いきや、同乗者が6人。みんなこの駐車場、よう知ってるんやな。45日で8800円。そら人気出るわ。
静かな夕暮れ、日高富川と沙流川沿いへ
帯広に向けて出発したのは16時57分。日高道を東へ進み、17時38分には日高富川ICで下道へ。
ローソンでチーズ大葉チキンカツ、焼け鮭ハラミおにぎり、パイシュー、ホットコーヒーを調達。なんか旅のはじまりって感じやな。
そのまま237号を北へ進む。沙流川沿いはほんまにグリーンが綺麗で、夕方の光が溶け込んでくる。
前回帰りに寄った二風谷こたんを通過して、山の駅ほろしりはもう閉まってたので、セイコマでスイーツ補充。目的の帯広まであと125km。
オッパイ山と、白い霧との闘い
沙流ユーカラ街道を走っていると、妙に視線を引く形の山があった。調べると西ケマニシリ岳かピリベツ岳。「オッパイ山」と呼ばれてるらしい。なんや、ええやん。

19時10分、道の駅「樹海ロード日高」を通過。
この道の駅も、何度来ただろう。
道の駅といえど、旅の回数を数えてくれる静かな目印みたいな存在だ。
帯広までは、残り約85km。
ここから日勝峠に向けて、標高がぐんぐん上がっていく。
アーティックジャーニー、その夜の峠とビリー・ジョエル
19時25分、日勝峠の1合目を通過。
夕暮れの光も届かぬ山の中、気温はぐっと下がり、空気が張り詰めていく。
そして、峠の頂上付近。
……霧がすごかった。
冗談やなく、5メートル先が見えん。
前のテールランプも、カーブの先も、なにもかもが白く包まれていて、
ただただ、恐怖。とにかく、それしかなかった。
一歩間違えば事故になるような峠道を、
集中力だけを頼りに、ひたすら慎重に下った。
ようやく20時10分、視界が開けた瞬間、
あまりに安心して、目の奥がズーンと疲れているのに気づいた。
──視るというのは、想像以上に、体力を使う。
20時22分、根室本線沿いの暗い道から帯広方面を見やると、
うっすらと、街の明かりが滲んでいた。
ああ、やっぱり帯広は“街”なんやな。
街灯のぬるい光さえ、今はなんだかありがたい。
ボブの予定がビリーになったBGM
本当は今日、ボブ・シーガーをBGMにドライブするつもりだった。
けれど、ふと「アーティックジャーニー」という言葉が浮かんできて、
気づけば、選んでいたのはビリー・ジョエルの『Songs in the Attic』だった。
かつての名曲たちをライブで再録したこのアルバムは、
どこか“再訪”とか“もう一度向き合う”という旅の本質に寄り添っている気がして。
誰かと話すでもなく、ただ峠を越え、
静かな曲とともに、少しずつ“北の空”へ向かっていく。
そんな夜のドライブだった。
帯広の夜 透明のドアと、煙る夜

帯広に着いた夜。
20時55分、久しぶりの「わ〜るど」へ。
クルマを停めて、店の灯りに引き寄せられるように歩いていった、その瞬間だった。
ガンッ!
「うわっ……!」
思いきり額をぶつけた。
まるで何もない空間だと思っていた先に、そこには、ぴかぴかに磨かれた透明なドアが待ち構えていたのだ。
こっちの心の隙間に忍び込むように、音もなく立っていたドア。
気づくのがほんの一歩遅ければ、ドアごと倒していたかもしれない。いや、逆に倒されていたかも。
……なんにせよ、ヤバかった。
ちょっと額をさすりながら苦笑い。
帯広に来たら毎回寄ってる店なのに、疲れてたんかな、、、。
実はこの店、帯広駅からは車で7kmほど離れた住宅街にひっそりとある。
観光客がふらりと立ち寄れる立地ではない。けれど、それでも人が集まる。
今夜も、地元の常連さんたちで賑わっていた。
何より外せないのが、鯖のスモークと餃子。
これがほんまに絶品。
燻された香りが鼻先をくすぐり、噛めばじゅわっと旨味が溢れる鯖。
そして、肉汁じゅわっの何個でもいけるおおぶりの焼き餃子。
ああ、これを食べるためだけに帯広に戻ってきてもいい、と本気で思う。

オーナーに頼んで、明日の早朝まで、店の駐車場にクルマを停めさせてもらうことにした。
旅の途中、この店があるだけで安心する。
閉じゆく店に、残したかった約束
けれど、そんな「わ〜るど」の夜の部が、今月いっぱいで終了するらしい。
この味、この空気、この時間がもう味わえなくなるかもしれないと思うと、寂しさが胸をかすめる。
1週間後の夜の部の最終日に、息子と寄らせてもらう約束をする。
……透明のドアにぶつかったのは、
もしかしたら、そういう「お知らせ」だったのかもしれない。
今のうちに、しっかり味わっておけよ、と。
だからこそ、今夜の一皿が、より深く沁みた。
ほな、また明日!