【魚津水族館】日本最古の水族館で、エイに笑われた日(富山)

魚津水族館の水中トンネル。アーチ型のアクリルガラスの中を歩く通路で、左右と天井を魚たちが泳ぐ。天井からは太陽の光が水面を通して差し込み、青い海の中を歩いているような感覚になる。

魚津水族館は、日本海側で最初に誕生し、現存する日本の水族館として最も長い歴史を持つ施設。起源は1913年(大正2年)、北陸本線全線開通を記念した「一府八県連合共進会」の第二会場として魚津に設けられた初代館で、会期後に町へ払い下げられて町立水族館として歩みを始めた。

運営は民間移管と再公営化を経て、戦時下の資材・電力不足の影響で1944年(昭和19年)にいったん閉館するが、戦後は1954年(昭和29年)の富山産業大博覧会に合わせた二代目、1981年(昭和56年)開館の三代目へと継承され、「北アルプスの渓流から日本海の深海まで」をテーマに富山湾の生態系を軸とした展示を深化させた。

三代目では、**日本で初めての全面アクリル製水中トンネル「富山湾大水槽」**を導入し、地域固有のホタルイカや深海生物の研究・展示で独自性を確立。2013年には創立100周年リニューアルも実施した。現在も約数百種規模の展示を維持し、富山湾の資源と環境を「見て・学ぶ」場として、解説展示やおさかなショー、ダイバーの給餌など体験型プログラムを通じて学びと観光の両立を図っている。

目次

110年の歴史を持つ水族館

魚津水族館の正面入口。階段を上った先に「魚津水族館 UOZU AQUARIUM」の看板が掲げられ、「WELCOME」の文字が来館者を迎える。昭和の面影を残すレトロな建物で、青い空と夏雲が広がる。
魚津水族館の入口。階段を上ると「WELCOME」の文字。1981年開館の昭和の建物が、そのままの姿で迎えてくれる。レトロな外観に、110年の歴史を感じる。

魚津水族館に到着した。

1913年開設。110年以上の歴史を持つ、日本最古の水族館だ。明治でもなく、大正だ。大正2年。遠い昔だ。北陸本線が全線開通した記念イベントで作られた水族館が、今もこうして残っている。すごい。

大正時代の初代魚津水族館の白黒写真。洋風建築の「水族館」と書かれた建物の前に、噴水と石造りの装飾が配置されている。左右対称の瀟洒な建物で、当時のモダンな雰囲気が感じられる。
大正2年(1913年)開設の初代魚津水族館。洋風建築の瀟洒な建物。110年以上前、この場所から魚津水族館の歴史が始まった。

戦争で一度閉館したけど、戦後に復活した。今の建物は三代目。1981年開館だから、もう40年以上経っている。でも古さが心地いい。レトロな展示。レトロな水槽。レトロな館内放送。全部が「昔ながらの水族館」で、それがいい。

入館料は大人1,000円。安い。良心的だ。

日本初の水中トンネルで、エイに出会う

館内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが「富山湾大水槽」。

日本で初めての全面アクリル製水中トンネルだ。1981年当時、これは革新的だったに違いない。今でも十分に迫力がある。頭の上を魚が泳ぐ。横も魚。360度、魚。

トンネルを歩いていると、突然、エイがアクリル板に張り付いた。

魚津水族館の水中トンネルで、アクリルガラスに張り付いたエイの腹側。白い体に口と鰓孔が見え、背景には他の魚たちが泳ぐ青い水中の世界が広がる。
エイがガラスに張り付いた。目の前に広がるエイの腹側。これが「顔」なのか。なんだか笑っているようにも見える。

エイの腹側。白い。口がある。鰓孔がある。目がある。これが「顔」なのか。なんだか笑っているようにも見える。いや、確実に笑っている。俺を見て笑っている。

「なんだお前は」とエイが言っている気がした。

「旅人です」と答えた。心の中で。

エイはしばらく張り付いたまま、ゆっくりと泳いでいった。さようなら、エイ。また会おう。

すしネタ展示という実用性

館内には「すしネタ展示」というコーナーがある。

つまり、魚が泳いでいる横に「この魚は○○寿司のネタです」と書いてある。実用的だ。教育的だ。そして食欲をそそる。

魚津水族館の「寿司ネタ見える 魚津水族館」ポスター。寿司ネタとして並ぶ富山湾の魚介類の写真と、日本初のアクリル水中トンネル「富山湾大水槽」の内部写真、立山連峰の風景写真が配置されている。
「寿司ネタ見える 魚津水族館」のポスター。富山湾の魚がどう寿司になるのか。水族館と寿司を同時に楽しむという、実に富山らしいコンセプト。

ブリ。美味しい。サバ。美味しい。イカ。美味しい。全部美味しそうだ。水族館なのに、寿司屋に来たような気分になる。

富山は魚が美味しい。さっき白えび丼を食べたばかりなのに、また寿司が食べたくなった。罪な展示だ。

避暑地としての水族館

魚津水族館の富山湾大水槽の水中トンネル内部。アーチ型のアクリルガラス越しに、ブリの群れが頭上を泳ぎ、水面には太陽の光が揺らめいている。観客が立つトンネルの通路が右側に見え、360度を魚に囲まれた海中体験ができる空間。
日本初の全面アクリル製水中トンネル「富山湾大水槽」。頭上をブリの群れが泳ぎ、太陽の光が水面から降り注ぐ。1981年、この革新的な展示が魚津に誕生した。今も変わらず、海の中を歩く感覚を味わえる。

8月の魚津。外は暑い。でも水族館の中は涼しい。

水槽の前でぼんやりと魚を見ている。時間が止まる。魚がゆっくりと泳ぐ。クラゲがふわふわと漂う。何も考えなくていい。ただ見ているだけでいい。

家族連れが多い。子供たちが「あ、サメだ!」と叫んでいる。学生のグループもいる。カップルもいる。みんな楽しそうだ。

避暑を兼ねて水族館。これは正解だった。涼しい。癒される。魚に笑われる。

魚津水族館の生物サイズ比較パネルの前で記念撮影する黒いTシャツの男性。左側には等身大のゴマフアザラシのイラスト(約150cm)、右側にはブリのイラストが描かれている。背景には海の生き物のシルエットが並ぶ。
魚津水族館の生物サイズ比較パネル。ゴマフアザラシは約150cm。意外と大きい。そして可愛い。記念撮影スポットとして人気。

無料休憩所でノマドワーク

13時に水族館を出た。

隣接する無料休憩所に入る。フリーWi-Fi、電源あり。

魚津水族館隣接の無料休憩所にある子育てコワーキングスペース。窓際に長いカウンターデスクが設置され、青い椅子が3脚並んでいる。デスクには「子育てコワーキングスペース」の案内板が置かれ、窓の外には魚津総合公園の遊び場が見える。フリーWi-Fiと電源完備。
魚津水族館隣接の子育てコワーキングスペース。窓の外で子供が遊ぶのを見ながら仕事ができる。フリーWi-Fi、電源あり。魚津、本気だ。

子育てコワーキングスペースまである。子供が遊ぶスペースの横で仕事や勉強ができる。

魚津は子育て世代にも力を入れているらしい。素晴らしい。こういう施設がもっと増えればいいのに。

子育てコワーキングスペースのキッズエリア。ピンク、青、オレンジ、緑のカラフルなクッションソファが囲むように配置され、中央には絵本や積み木が置かれた遊びスペースがある。奥には小上がりの畳スペースと小さなテーブルが3つ並び、大きな窓から明るい光が差し込む。
育てコワーキングスペースのキッズエリア。カラフルなソファに囲まれた遊び場で、子供たちは絵本や積み木で遊ぶ。親は目の届く場所で仕事。理想的な空間設計だ。

Wi-Fi速度は測らなかった。というか、測る気力もなくなるほど、のんびりとした空気が流れていた。魚津、恐るべし。

ししがコーヒーを淹れてくれた。少しだけ仕事をした。魚津水族館を眺めながら。贅沢な時間だった。

110年続く理由

魚津水族館が110年以上続いているのは、たぶん理由がある。

派手じゃない。最新技術もない。でも、ちゃんと魚がいて、ちゃんと展示されていて、ちゃんと楽しい。それだけだ。でもそれが大事なんだと思う。

「北アルプスの渓流から日本海の深海まで」というテーマも明確だ。富山の自然を、富山の海を、富山の魚を見せる。それが魚津水族館のアイデンティティだ。

大正時代から令和まで。110年。これからも続くだろう。エイが笑いながら。

ありがとう、魚津水族館。また来ます。

魚津水族館の見どころ

富山湾大水槽(水中トンネル)

日本初の全面アクリル製水中トンネル。1981年導入の革新的展示で、頭上と左右を魚が泳ぐ360度の海中体験ができる。ブリ、エイ、サメなど富山湾の大型魚が間近に見られる。

ホタルイカ・深海生物展示

富山湾固有のホタルイカをはじめ、深海生物の研究・展示に力を入れている。深海魚の生態や神秘を学べる貴重なコーナー。

すしネタ展示

魚の横に「この魚は○○寿司のネタです」と表示する、実用的かつ教育的な展示。富山の食文化と海の恵みを同時に学べる。

おさかなショー

飼育員による解説やダイバーの給餌ショーなど、体験型プログラムが充実。魚たちの生態を楽しく学べる。

レトロな雰囲気

1981年開館の三代目館舎は、昭和の水族館の雰囲気を色濃く残す。最新技術はないが、その素朴さが逆に心地よく、懐かしさを感じさせる。

基本情報

スクロールできます
項目内容
名称魚津水族館(魚津市立)
公式サイトhttps://www.uozu-aquarium.jp 
テーマ「北アルプスの渓流から日本海の深海まで」
「日本海を科学する」
位置富山県魚津市三ケ1390(魚津総合公園内)
開館史初代1913年開設、二代目1954年、三代目1981年開館
特色日本初のアクリル製水中トンネル「富山湾大水槽」、
地域生物重視展示
種数・規模約500種・1万点の展示(目安)
営業時間9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日12/29~1/1、12/1~3/15の月曜(祝日の場合翌平日)
料金大人1,000円、小中学生500円、幼児(3歳以上)200円等
アクセスあいの風とやま鉄道魚津駅からタクシー約10分、
富山地鉄西魚津駅徒歩約20分

魚津水族館の歴史

初代(1913年〜1944年) 大正2年、北陸本線全線開通記念「一府八県連合共進会」の第二会場として開設。会期後、町立水族館として運営開始。戦時下の資材・電力不足で1944年閉館。

二代目(1954年〜1981年) 昭和29年、富山産業大博覧会に合わせて再開。戦後の観光復興と学術研究の拠点として復活。

三代目(1981年〜現在) 昭和56年、現在地(魚津総合公園内)に移転・開館。日本初の全面アクリル製水中トンネル「富山湾大水槽」を導入。2013年には創立100周年記念リニューアルを実施し、現在に至る。

110年以上の歴史を持つ日本最古の水族館として、富山湾の生態系を伝え続けている。

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