北海道十勝地方の小さな村、中札内村に佇む青い屋根の洋風建築が、豆を愛してやまない架空の人物「豆畑拓男氏」の家を訪ねるという、ユニークな体験ができる資料館「ビーンズ邸」である。
雪景色に映える洋風建築の趣ある佇まい

木製の歩道橋を渡ってアプローチする外観からして、一般的な資料館とは一線を画している。青い屋根と白い外壁のコントラストが美しい洋風建築は、昭和27年(1952年)に農場の事務所として建てられた歴史ある建物だ。冬の雪景色に映える姿は、まさに十勝の開拓時代を物語る貴重な遺産である。
まるで豆博士の自宅を訪問?独創的なコンセプトに驚き

館内に足を踏み入れると、そこは確かに「ビーンズ氏」の自宅そのものだ。ダークブラウンの木製家具で統一されたリビングには、暖かみのある照明と青いカーテンが配され、まるで友人の家を訪ねたような親しみやすい空間が広がっている。
右手に見える大量の瓶詰め豆のコレクションが、この家の主人の豆への愛情を物語っている。子どもたちには「豆博士のお家探検」として大人気で、堅苦しさを感じることなく農業や食文化に触れることができる。
圧巻の豆展示室と歴史を語る古写真

館内で最も印象的なのが、ガラスケースに整然と並ぶ世界180種類もの豆の展示である。小さな瓶に収められた色とりどりの豆は、まさに自然が生み出した宝石のようだ。普段スーパーで見かける大豆や小豆から、見たこともない珍しい豆まで、その多様性に驚かされること間違いなしである。
さらに興味深いのは、昭和初期の豆選別作業の様子を写した貴重な古写真だ。白い作業着を着た大勢の女性たちが手作業で豆を選別している光景は、十勝の農業史を物語る貴重な記録である。

機械化される以前の農業の現実を目の当たりにすることで、現代の豊かな食生活への感謝の気持ちが湧いてくる。
ビーンズ氏のキッチンで豆料理への想像を膨らませる

キッチンエリアでは、木製の食器棚に豆の瓶がずらりと並び、まさに豆料理研究家の台所といった趣である。現代的な設備と昭和レトロな雰囲気が絶妙に調和し、ここで様々な豆料理が生まれているという設定に思わず引き込まれてしまう。
十勝の豆商人たちの前掛けが語る商業史

展示の中でも特に印象的なのが、実際の豆商店で使われていた前掛けコレクションである。「庄岡商店」「小森照吉商店」など、様々な商店の名前が染め抜かれた紺色の前掛けは、十勝地方の豆流通を支えた人々の営みを物語っている。一枚一枚に刻まれた屋号や電話番号が、当時の商業活動の息づかいを今に伝える貴重な資料だ。
豆の品種研究から見える農業の奥深さ

展示ケースには、様々な豆の品種研究資料も展示されている。「エリモショウズ」などの品種名と共に、豆の写真や栽培データが詳細に記録され、農業研究の地道な努力の積み重ねを実感することができる。十勝が豆の一大産地となった背景には、こうした品種改良への絶え間ない取り組みがあったのである。
道の駅「なかさつない」でのんびり観光
ビーンズ邸は道の駅「なかさつない」に隣接し、入館料無料で楽しめるのも魅力の一つである。ドライブの途中に気軽に立ち寄って、十勝の自然と農業文化に触れることができる。
道の駅では地元の新鮮な農産物や加工品も購入できるので、ビーンズ邸で豆について学んだ後は、実際に十勝の豆を味わってみることをおすすめする。
隠れた観光地として注目上昇中
2017年にはトリップアドバイザーの人気都市ランキングで中札内村が全国16位、北海道内2位に選ばれるなど、知る人ぞ知る観光地として注目を集めている。
大自然に囲まれた静かな村で、のんびりと豆の世界に浸る時間は、日常の慌ただしさを忘れさせてくれる特別な体験となるだろう。
まとめ:豆から始まる新しい発見の旅
中札内村豆資料館「ビーンズ邸」は、単なる資料館を超えた体験型の学習スペースである。豆という身近な食材を通して、十勝の歴史、農業、そして世界の食文化まで幅広く学べる、まさに「屋根のない博物館」の理念を体現した施設といえる。
昭和の農業研究から現代の品種改良まで、豆に関わる人々の営みが詰まったこの小さな館で、きっと新しい発見と驚きに満ちた時間を過ごせることだろう。北海道旅行の際は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。
基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
正式名称 | 中札内村豆資料館(通称:ビーンズ邸) |
住所 | 中札内村大通南7-14 |
電話番号 | 0155-68-3390 |
開館時間 | 午前9時~午後5時 |
休館日 | 4月~11月:無休、12月~3月:月曜日、年末年始 |
入館料 | 無料 |
建築年 | 昭和27年(1952年) |
移築年 | 平成17年(2005年) |
アクセス | 帯広・広尾自動車中札内ICから車で5分 |
展示内容 | 世界の豆180種、豆料理レシピ、農業関連資 |
公式サイト | http://www.beans-museum-nakasatsunai.jp/ |
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