知床半島の朝は、一本道をただひたすら東へ進むところから始まる。
国道334号線を知床峠に向かって走り、海別岳に見守られるように進む。5時56分、道は海岸線へと切り替わる。潮の香りがふっと車内に入り、秀逸なデザインの道路標識が視界に飛び込んでくる。
2分ほどでカーブを曲がると、正面から朝日が差し込む。左手には、まるでミルフィーユのように重なり合う山並み。
その光景に少し見とれているうちに、6時15分、目的地のオシンコシンの滝に到着した。
駐車場には、車中泊と思しき車が6台。滝はちょうど日陰になっており、空気はひんやりと心地よい。滝へ近づくほどに温度が下がり、マイナスイオンの霧が肌を包む。65段の階段を上がれば、滝の中腹に到達し、顔に細かい水の粒がかかる。これが、実に気持ちいい。
6時30分の気温は26度。日陰は涼しいが、一歩日向に出れば北海道の夏らしい熱気が押し寄せる。この時期、朝の涼しさは5時台まで――そんな季節の移ろいを実感した。

オシンコシンの滝とは
オシンコシンの滝は、北海道斜里町のチャラッセナイ川河口付近に位置し、知床を代表する名瀑。2筋に分かれて流れ落ちる姿から「双美の滝」とも呼ばれ、1990年には日本の滝百選、さらに知床八景にも選定されている。
名称はアイヌ語「オ・シュンク・ウシ」(そこにエゾマツが群生するところ)に由来する。かつてこの地はエゾマツの森が広がり、アイヌの人々にとって生活・信仰の場でもあった。滝を流れるチャラッセナイ川の名は「チャラチャラ音をさせる川」という意味だ。
海沿いに立つこの滝は、古くから旅人の目印であり、現在も国道沿いという立地から観光バスやドライブ客で賑わう。駐車場から滝の中腹までは階段で直行でき、迫力ある水しぶきを間近に感じられる。
見どころと四季の表情
- 春:雪解けで水量が増し、一年で最も力強い姿に
- 夏:緑に包まれ、涼を求める人で賑わう
- 秋:紅葉と白い水流のコントラストが美しい
- 冬:一部が凍り、流氷と海原の絶景が展望台から望める
基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
正式名称 | オシンコシンの滝 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町ウトロ西 |
標高 | 70m |
落差 | 約30m(資料によっては50〜80m) |
幅 | 約30m |
形式 | 分岐瀑(双美の滝) |
選定 | 日本の滝百選(1990年)、知床八景 |
アクセス | JR知床斜里駅からバスで約40分/車で約30分 |
駐車場 | 普通車36台、バス5台、身障者用1台 |
入場料 | 無料 |
見学可能時期 | 通年 |
トイレ | あり(冬期閉鎖あり) |
売店 | オシンコシン館 |
旅メモ
朝日と出会ってからわずか15分で、この涼やかな滝にたどり着く。
知床の朝を知るには、やっぱりこの時間帯に来るのが正解だと思う。
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