
北海道足寄と陸別を結ぶ国道242号沿いにひっそり佇む白い崖「上愛冠(かみあいかっぷ)」。一見自然に見えるその景色に隠された、高度経済成長期の採掘の歴史と記憶を辿る。北海道の風景に刻まれた人の営みに思いを馳せる旅。よければ、一緒に旅気分を味わってみてください。
一本道の途中で見つけた、白い断崖
足寄から陸別に移動中の242号線は一本道。
このまま32kmほど走れば陸別につく。
どこも寄らずにひたすら走るつもりだったが、上愛冠のある景色に目を奪われた。
深い緑の中で、ひときわ目を引く白い断崖が現れた。
一見すると、自然が長い年月をかけて削り出した崖のように見える。
しかし近づいてみると、その白い肌はあまりにも均一で、人工的な削り跡のように感じられる。
ここは、かつて採掘のために山が削られた場所だ。
上愛冠の景色に出会う
足寄の道を進み、上愛冠の集落を抜けると、視界の向こうに白く光る崖が見えてくる。
夏の青空と濃い緑に映える白い岩肌は、自然のもののように美しいが、どこか不思議な違和感もある。
草むらの向こうにそびえる崖と、その前に立つ一本の高い木。
人の営みが遠ざかって久しいこの場所には、静かさの中に重みがある。
削られた山の正体
白い岩肌は、かつて軽石や石灰を掘り出すために削られた跡だといわれる。
高度経済成長期、北海道のあちこちで建設資材や土木資材の採掘が盛んに行われた時代、この山もその波に飲まれたのだろう。
削られ、運び出され、地形を変えられたこの場所には、当時の人々の暮らしや労働の記憶が刻まれている。


自然と人の痕跡が重なる場所
今は採掘も終わり、草木が覆い始めているが、白い山肌は今もむき出しのままだ。
緑に覆われてもなお、消えないその跡が、この場所に人の手が加えられたことを伝えている。
「自然に見えるものが、実は人の営みの証である」ということを、静かに教えてくれる場所だ。
最後に
上愛冠の白い断崖は、足寄の歴史の一部だ。
人が自然に刻んだ傷跡は、やがて景色の一部となり、物語を宿す。
立ち止まって見つめてみると、ただの風景が、ひっそりと語りかけてくる。
それに気づけるかどうかは、旅人次第なのかもしれない。
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