道の駅おとふけ〜セカンドストリート〜理髪店ブルー〜ひまわり温泉〜魚丸〜道の駅なかさつない
愛着がにじむ白ハイゼットの日
2025年春の北海道車中泊の旅(Part11)
3日目:2025/04/02 運転時間:約1時間30分 走行距離:約45.0km
冷えた朝、白い息とスタジャンと
3時50分、道の駅おとふけで目を覚ました。
朝靄に包まれた道の駅の車内。フロントガラス越しの空がぼんやり白んでいく。
運転席で、毛布一枚を身体に巻きつける。冷えた空気が首筋にすべりこむ。……さぶっ。
ふと思い出して、スタジャンを布団代わりに被ったら、意外とあったかくて『これ、寝袋より気軽でええやん』とひとり笑った。
手放そうと思ってた一着が、ここにきて「生き残り」や。こいつは売らんとこ。
兄から弟へ、暮らしのバトン」
この日の帯広入りには、ちょっと特別な理由があった。
岡山で大学院まで学んでいた長男がこの春、無事に修了。それに伴って、彼のラックやテレビ、毛布やフロアマットといった生活道具を、帯広で暮らす次男の拠点へと移すミッションが発生した。
家から家へ、兄から弟へ――。家具の移動だけじゃなく、思い出や時間の一部を運んでいるような、そんな旅だった。
そして、次男が「これはもういらないかな」と判断した衣類や雑貨は、セカンドストリートで売却したり、処分したりして、生活スペースも心も軽くしていった。
そう、この日はただの引っ越しじゃなく、家族の“整理整頓”と“次のページ”をめくる日だった。
ものを動かすと、気持ちも動く。だから人は、旅をしながら整えるんかもしれん。
車内DIYで得る小さな達成感
9時過ぎ、白のハイゼットカーゴに荷物を積み直しつつ、久々に「寝れる車中泊仕様」へと再設計。
まずは荷台の物をすべて出して、マットを敷き、ジョイントマットでクッションを確保。VANTALEXのエアマットを広げて、ベース完成。
ノーマルワイパーに戻し、雪も少しだけ舞った。こういう“段取り”がたまらん。今回は十勝の物産も運ぶから、トランクもデスク代わりに使う設計にしてみた。
ラック設置と学生たちの季節感
拠点に戻り、岡山から持ち込んだラックやテレビ、プリンターを設置。カラーボックスはぴったり玄関横の収納に収まってくれて、ひとつ“整った”感じがしてうれしかった。

外では、帯広畜産大学に進学してきた新入生と、その親御さんたちが引っ越し作業に追われていた。
春の帯広は、あちこちに“新しい暮らしの音”が響いている。どこか懐かしくて、ちょっと誇らしいような空気だ。
そういえば――ちょうど一年前の今頃、自分も同じように次男の引っ越しに追われてたっけ。
岡山からの長男の荷物を、帯広の弟の部屋へ運び込むこの旅の途中で、ふとその時の景色がよみがえった。
この春という季節は、誰かのスタートを静かに見送る、そんな時間なんかもしれん。
ランチ2連敗と、がっつりリカバリー
昼は、更別にある中華料理屋「翡翠楼(ひすいろう)」を目指して車を走らせた。
ここは帯広から車で20〜30分の距離にある、地元で人気のお店。
実はこの店、次男が春休みにバイトしていた職場の近くにあって、
そのとき一緒に働いていた先輩にごちそうしてもらった「あんかけ焼きそば」が、
とにかく大きくて、うまかったらしい。
「親父にも一度食べさせたかったんだ」
そんな一言にちょっと嬉しくなって、二人で向かったんやけど……
残念ながら、今日は貸し切り営業やった。笑
ちょっと肩すかし。でも、その気持ちだけで、なんや十分やった気もした。

ならばと、帯広まで戻って、定番の「ビーフインパクト」へ。
目当ては、いつも頼んでる大好物――あのポークチャップ。
……のはずやったんやけど、メニューから消えてた。
まさかの事態に、ふたりして小さく落胆。笑
それでも気を取り直して、ハラミステーキ270gとハンバーグを注文。
しっかりジューシーで、肉の旨みがガツンときて、元気もチャージできた。
ポークチャップはなかったけど、「まぁ、ええやん。ハラミも抜群やったし」。
こういう日も、旅にはつきもんやな。

段ボールは届く、そして俺が動く。
午後は洗車をすませて、稲田のヤマトセンターへ。
奥さんがネット通販で服を買ったんやけど、いつの間にか配送先の初期値が次男の住所になってしまってたらしく……
2リットルの水やお茶12本、化粧品、服――。
立て続けに届く段ボールに、次男は完全にあきれてた。笑
段ボールを前にして「あのさ、俺ん家、荷物センターちゃうし……」とぼやく顔が目に浮かぶ。
一方で、奥さんはというと――
「えっ?そっち届いた?ごめん、ごめん♪」と、B型らしいあっさり感満載で特に気にしてない。
「水とお茶はええけど、さすがに化粧品は困るって」
ということで、服と化粧品を西宮の自宅に送り返すことに。
結局、梱包して送り返すのは、もちろん俺。
……この構図、我が家ではもう何度目やろな(笑)
そして、せっかく“送料無料”で買ったのに、帯広から兵庫までの送料が2100円。
環境に負荷をかけたのか、市場経済に少し寄与したのか……(笑)

シロと別れた午後の整理
荷物を送ったあと、近くのセカンドストリートへ。岡山や西宮から運んできたダウンやキャップ、服や雑貨を売却。
なんと、買取価格は19,200円。思った以上に値がついて、ちょっとびっくり。
査定の待ち時間は、車の中でぼんやり。
「なんで自分、帯広で西宮と岡山の服売ってるんやろ……」と笑いながら、
思い出を整理したり、次の段取りを考えたり。
そんな時間も悪くない。
そのあと向かったダイソーでは、シール剥がしを購入。
実は、愛車の白いハイゼットカーゴ――通称「シロ」の“眉毛”(ライト上の目印シール)が、
片っぽ取れてしまってたんよね。
この車、ホームセンターの駐車場に停めると、同じような白い軽バンが多すぎて、
見分けがつかへん。だからライトの上にシールを貼って“眉毛”にして、目印にしてた。
以来、この車のことを「シロ」と呼んでたんやけど、
一冬越して雪にさらされたせいか、片方の眉毛がはがれてしまい、
この日、ついに両方きれいに取り除いた。
「シロ」は「白のハイゼットカーゴ」に戻った。
……たったそれだけのことなんやけど、不思議と、もう一度眉毛をつけようとは思わなかった。
うん、少し前に進めた気がした。
いつもの散髪屋とひまわり温泉の発見
理髪店ブルーでいつものカット。店主と軽口を交わしながら整えてもらう。
夕方は、よく通うオベリベリ温泉ではなく「ひまわり温泉」へ。なんとコワーキングスペース付きで、1100円でミニ丼までついてくる!これは…すごい。
温泉入って仕事して、サウナ入ってまた仕事して…できるやん!新しい過ごし方、見つけたかも。

夜の帯広、でも飲みに出ない選択
夜、息子と合流して「魚まる」で晩ごはん。
変わらぬ美味しさに、どこかホッとした。
でも――
観光客向けでもなく、常連感強めでもない、ちょうどええ店が見つからなくて、
なんだか今の自分のテンションには合わへん気がして、そっと通り過ぎた。

今回は、そのまま飲みに出ることはせず、静かに過ごすことに決めた。
十勝駅周辺のノルテパークの安いコインパーキングに車を停め、周囲をぶらりと歩く。
北の屋台村、十勝乃長屋、ムーラン・ルージュ……
灯りのともる飲み屋街は、どれも魅力的で、一瞬心が動いた。

その判断が、少しだけ誇らしかった。
「今は、無理に盛り上がらんでもええやん」って、自分に言えた夜やった。
寒くない、をちゃんと設計した夜
22時46分、道の駅なかさつないに到着。
寝袋には肌着で入ると体温が伝わって暖かくなる――どこかで見たその知恵を試してみたら、本当にぬくもった。
電気毛布も湯たんぽもいらんかった。
ああ、自分なりの“寒くない”を設計できてる。
ひとつずつ、旅の中で見つけてきたものが、ちゃんと自分を守ってくれてる。


ひとつひとつ、自分の体に合った旅の設計ができてきた気がするな。
……白のハイゼットカーゴも、スタジャンも、そして、
この夜も――ちゃんと、あったかい。